装具をつくる場面に10年以上同席してきて、
いろんな患者さん、いろんなPT、4~5人の義肢装具士さんの
仕事をみてきました。みつわ です。
今回もよろしくどうぞ。
「装具は難しい。しっかり勉強しないと」
なんて思ってませんか?
新人の子もそうですけど、
中途採用のそれなりの経験を持ってる人でも、
結構、こう思ってるPTって多いんですよね。
装具って知識があるとカッコ良いからですかね。
もちろん、勉強するに越したことはないですケド、
勉強する所を間違えないようにしましょうね。
下肢装具にはプラスチック型と金属支柱付きがあって、
プラスチック型には、シューホーン、湯の児…
継ぎ手には、タマラック、ジレット、クレンザック、ダブルクレンザック、GateSolution…、
ベルトはT字型ストラップ、Y字型ストラップ…、
インソール機能として、指枕、内側アーチサポート、外側エッジ、メタタルザルバー…
費用と補助制度と自己負担額…
………
覚える事いっぱいありますよね。
新しい装具も継ぎ手もどんどん出てきます。
でも、これってホントに全部覚えないといけないんでしょうか?
理学療法士は装具の専門家なんでしょうか?
いやいや、
装具の専門家は、義肢装具士ですよ!
義肢装具士と張り合って、
「プラスチック型で、長さは下腿のこの位までで、継ぎ手はタマラックで、背屈位にするのにショックアブソーバーの厚みをつけて、クロートゥがあるから指枕をこのくらいの厚みでつけて、滑り止めも底につけて…」
なんて指定する必要はないんですよ。
理学療法士は、動作の専門家、担当してる患者さんについてのプロです。
協力して作りましょうよ。
その方が絶対、良いものができますから。
下のリンクを見てみて下さい。
下肢装具の作成過程が丁寧に説明されています。
ぼくも実際につくる所を何度かみせてもらいにいきましたが、
すごくその時のイメージに近いです。
どうですか?
装具をつくるのって、思ってるよりすごく自由度が高いんですよ。
採型の時のアライメントのとり方、
陽性モデルの修正の仕方、
プラスチックの素材とかちょっとした厚み、
弾性を調整する成形やトリミング、
金属支柱の曲げ具合、
アブミの長さとか形、
靴部分のフィッティング、
装具の底の滑り止めの選択…などなど。
PTが一方的に指定した所で、
細かい部分のほとんどが義肢装具士さんの判断に頼らざるを得ないんですね。
だから、ぼくらPTがすべきことは…
装具を作る目的はなにか?
純粋に治療用なら、動作がどうなるようにして、どんな刺激をいれていきたいのか?
生活用も兼ねているのか?
今後、別の装具を作り直すのを想定してるのか?
どんな使い方で、どこで使うのを想定してるのか?
屋内?屋外? 平地?不整地?坂?段差?階段? 板の間?畳?絨毯?
靴を履いて使う? 使う靴はどんなもの?
普段からつけっぱなしで移乗の時のため?
自宅内の数mの歩行程度?
自宅周辺の数十mの歩行程度?
公共交通機関を利用したり結構外出する?
外出どころか運動のために歩く?
もしかして小走りなんかする事もある?
自分で着脱する? 着脱するのに苦労する?
装具をつくる前の身体機能の変化と、退院後の生活を踏まえて、今後どう変わっていくことを予測してるのか?
回復過程でどんどん変化してる最中?
回復が落ち着いて変化が少なくなってきてる?
活動量が増えて痙性が強くなってきてる?
臥床する生活になりそうとか、力任せに動作して、拘縮のリスクが高い?
他にも、
患者さんの性格上、使用する上でどういう心配があるのか?
経済的に考慮すべき事があるのか?
とかですね。
書き出したらいっぱいあって、
「やっぱり難しいやん!」って思うかもしれませんケド、
普段のリハビリ、アプローチの延長のことばかりですよね。
装具のためだけの知識じゃなくって、
患者さんをよくするためのアプローチをしていれば、
自然と必要になってくるものですね。
でも、単発でしか関われない義肢装具士さんには、
こういう情報はなかなか得られないんです。
もちろん、すべて義肢装具士さんにお任せって訳にはいきません。
だって、義肢装具士さんにも動作観察が得意な人も、「それはPTの仕事でしょ?」的なスタンスの人も、いろんな人がいますから。
だから、
装具にどんな機能を求めてるか?
これはしっかりと伝える必要があります。
底背屈を固定したいのか? 底屈を制動して背屈は遊動なのか? 背屈を補助したいのか?
内反を抑制したいのか? 抑制するのに通常の形よりも何か工夫が必要なのか?
クロートゥを抑制したいのか?
他に歩容で修正したい事があるのか?
評価用に一般的な下肢装具を使って、
その下肢装具では足りない機能、要らない機能を把握するのが大事なんです。
そのためには工夫しましょう。
下腿のベルトを外して背屈を遊動にしてみるとか、
ベルトの代わりに弾性包帯で制動にしてみるとか、
下腿後面にハンドタオルなんかを挟んで厚みをつけて背屈角度を調整してみるとか…
金属支柱付きではこうなって、シューホーンではこうなって、オルトップではこうなる…その違いはどこからくるのか?
そんな評価が大切ですね。
この辺はできれば義肢装具士さんと一緒に確認しましょう。
そして、どんな装具がいいか相談して決めたら良いんです。
装具の専門家として、提案してくれますから。
長くなりましたが、
患者さんをよくするために自然と必要になってくる評価をしっかりして、
義肢装具士さんと相談して装具をつくりましょう。
装具の小難しい知識よりも
患者さんの評価が大切ってことですね。
今回もありがとうございました。
次回もよろしくどうぞ。
P.S.
装具を作るのに、
「患者さんに大金を負担してもらわなくちゃいけない」
って作るのにブレーキがかかってる人がいますが、
補助制度について義肢装具士さんとか、医療ソーシャルワーカーさんに
しっかり確認しましょうね。
数カ月後に補助金が支給されて、
結果、数千円で長下肢装具が作れてしまうなんてことは普通ですから。
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